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ショウ・チュ=Chou-Chu

VOL.16

'56年「太陽の季節」でデビューした石原裕次郎の全く伝統を受け継がないその存在感とスター性は、その後、様々な映画的革命と伝説を産んだ。別けても、同年二作目「狂った果実」(脚本石原慎太郎)は殊に強烈で、尚且カメラやカットが優れてモダ−ン。監督中平康の圧倒的テクニックとセンスの結晶した映画だ。―太陽族と呼ばれる湘南の金持ちの息子共。兄弟(裕次郎と津川雅彦)と謎めいた女(北原三枝)。退屈な彼等は日常を刹那的に享楽するだけ。横浜に新しくナイトクラブが出来たといっては、オープンカーに鈴なりで駆けつける。テーブルにやってきたボーイに一人一人からかい気味に注文する。“ジンコーク”“ウイスキーサワー”…ときて、最後に“そちらは?”と声を掛けられると、ハーフ(岡田真澄)だったのでボーイは慌てて、“Oh Excuse Me Sir. What would You ……Sir ?”と聞くと間をおいて“Shou-chu アル?”と答えて嬲る。
 物語の方は、純真な弟は年上の女に真剣に恋するが、米人のオンリーだと知った兄は、“弟を誑かすな!”と無理矢理自分の女にしてしまう。精神的愛を弟に向けつつも、兄の欲望を受け入れるアンビバレンス。遠出したヨットを、事実を知った弟のモーターボートが追いかける。恐れを失った弟は憎しみを乗せて、夜の海を破滅へと疾駆する。(スリリングなオープニング・タイトル・バックは同シーンだった。)