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闇の中の魑魅魍魎
VOL.92

 市場経済つき進み中国の高度成長は続いている。経済ばかりか『ワイルド・スワン』『ジョイ・ラック・クラブ』始め中国映画の国際進出と、表現分野の勢いも凄い。都市の駅前に万人が群がる光景は、日本の光と影の昭和30年代といわれる。
 先日、当時の記憶を取り戻す映画的体験をした。D・ジャーマンの遺作『ブルー』とA・ワイダの『ナスターシャ』で、共に既成映画館でなかった為会場は光一点ない暗闇の内だった。片やブルーの画面のみ、片や玉三郎と永島敏行だけの舞台劇をそっくり映画にした異色作で、無神経に明るい映画館で成立するものではない。暗闇となればこそ画面は銀光を放ち、観客は複合感覚に遊び画面を独占、自身の時空間を領有できるーだった。痴漢やおかまに一部の隙も与えない明るさになったのは、同じ顔をしたあの街この街が画一的な明るさの中に投げ出され、都市自体が都市文化形成を放棄=遊園地化(アミューズメント)していったのに連動する。
 で、永住権を得た在米中国人が一時帰国して眺めた故国は、“天安門事件五周年を前にして民主化を恐れる腐敗した政府と、金儲けの話ばかりの亡者になった中国人”だそうで、歪んだ経済成長化、「マルボロ・サッカーリーグ」を開幕するは、人権問題の最中、魏京生氏は拘束するは、国の真意は闇の中。

(明国人)

(1994.3記)