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葦の髄から天井をのぞく
VOL.78

 富山の初午行事の一つ“俵ころがし”という雪の中の神社や家々を練り歩く子供等の豊作祈願をニュースで観て、幼時の秋の行事(広島)“亥の子”という収穫祭を思い出したが、今、米が育んだ様々な文化芸能は、20年余に及ぶ政府の減反政策の下で、風前の灯と化そうとしている。
 欧州を蔑視から羨望へと転換させた米(アメリカ)の黄金の50年代=アメリカン・ドリームと、その攻略的背景を衛星放送で討論していた。欧州的なるものとの断絶、植民地主義に反対した不干渉主義のモンロー・ドクトリンの枠が開化した50年代が賞賛と妬みと綻びで語られている生番組の現場に、ブッッシュ最後のクリントンへの手向けか、再び湾岸戦争の最新スポットが入り、苦笑する討論者は、“現在は相当に傷口が広がっている”と皮切り、視聴者はただ白む。
 戦後日本は歴史文化を切り刻み経済的繁栄と交換したが、いくら追従しても、物事の痛烈な虚しさと人の風景の切なさを感じる。大江さん、あなたの『治療塔』には新しい地球が生まれるとか!? 誰と誰がその塔に登れるのでしょうか?

(東方系モンゴロイド)

(1993.1記)