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沈香も焚かず屁もひらず
VOL.62

 古来〈香り〉は人を繋ぐ文化だった。薬草、花、香料などの香りの刺激で治癒を図ることをアロマテラピー(芳香療法)という。ストレス性の心身変調を治癒する訳だが、これをビジネスに応用、「10年後の100億円産業」として、早くもオフィスビルでその効用が開陳。即ち、午前中は気分を高揚させる柑橘系、仕事中は集中力を増す花、退社時は疲れを癒す木、という具合にコンピューターで変化させる。題してBGF(バック・グラウンド・フラグランス)。BGFと共に緊張を解きα波(鎮静波)を出やすくする。何という快適性(アメニティ)!何という便利性(コンビニエンス)!―この国はどうしていつも文化を跨いで産業に横滑りするのだろうか? 良く卵を産む鶏や良く牛乳をだす丑に見えてくる。―で、帰りにレコードやのα波(というジャンル)の棚からトランキライザーというCDを買って、デリカ・フーズも買って、己が家のオーディオにセットする。その便利な快適の高まり等、一度座禅でもすればすぐ苦痛へと変るさ。
 喜怒のない哀楽は人を繋げない。そうして香りも音もノーメンクラツーラへと組み込まれて行くぜスキゾフレニー達。匂いおこせよ、エンドルフィン。

(β波ソニー・ボーイ)

(1991.9記)