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母を訪ねて三千里
VOL.58

 5月12日は母の日。18才9ヶ月の史上最年少貴花田が希代の横綱千代の富士を破り、世間は大狂乱。貴花田にとって母親は角界のおかみさんだ。この〈母〉は大金星にもはしゃがず、「一人が勝ったといって……」と兄の若花田を気遣う。同日、麻薬事件で帰国した勝新太郎にも世の中は大騒ぎ、芸能マスコミは灯に群がる蛾のように醜い。玉緒夫人は沈黙を通し、常に天真爛漫俳優の〈賢母〉であり続けるが、贈り物は無い。
 国の母、卑弥呼の末裔は今?と、「母の日」にちなんで総務庁が「統計にみる日本の母親」をまとめたら、“8割が20代で出産を終え子育てをすませて職場に出る。母親の就業率は53.7%、女性の出生率は1.57人を記録”とあるが、実情はもっと過酷だ。女性の高学歴化、社会進出、晩婚化、婚姻率低下の中で男性は〈結婚難民〉としてギャルのアッシー君やメッシー君に甘んじているのである。母はどんどん遠くなる。カーネーションを母に贈る習いは誰が決めたか、この日、誰の操作か花の値段が倍になる。それで少年少女の気持ちも倍になるのだろうか!? 「モノが豊かなのに」ではなく「モノが豊かなためにココロが貧しい」

(安寿と厨子王)

(1991.5記)