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多岐亡羊
VOL.54

 1992年の初夢は苦い正夢に満ちている。空ではオゾン層に穴が開き、陸上では熱帯林が抜採され、7500万年かけて形成されたグレートバリアリーフは、リゾート開発による土壌流出と薬品投与でサンゴ礁の骨をボロボロにして死の海を造る。天、地、海と人類はどうしても21世紀迄に地球を滅ぼしたいのか?電車の中吊り広告は「生活、文化、科学の頂点を極めたマヤ文明の謎、自然との調和を失った!」と空しくひらめくも、衛生をどんどん飛ばして宇宙に行けば良いか。

 衛生と云えば、かつてアメリカは、中ソ国境の衛星写真で中国を脅し米中国交を計った習いを、今回の対イラクにも応用したという。アラビア半島への大挙軍隊の投入に動じないフセインに対し、湾岸を張り巡らせた衛星写真で最後の威嚇を行ったが、相手(フセイン)は、中国でもキューバ危機のソ連でもなく「自負心と名誉心をあらゆる価値の上に置く」神の意志の人である。――羊の角は渦巻いて曲がっている。中国古書に「羊は屈なり」とある。今年が羊年なら、日本は懲りないアメリカに屈する羊という訳だが、今年に限るものではない。

 因に、海部首相は羊年らしい。

(オオカミ少年)

(1991.1 記)