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門前雀羅(じゃくら)を張る
VOL.48

 「育てる植物と自然に育つ植物は大違い。教育は子を育ててはいけない。」と某植物学者が真理を話していたが、先日神戸の女子高生が“2・1・0!”とカウントダウンで勢い良く閉める門扉に頭を潰され死んだ。遅刻防止の校則を暴力的に振った教師の犯した殺人だ。全国の学校では今、旧制度復活の徴候がひどい。ヨーロッパで壁がボコボコ崩れているというのに。 

 所で、この小中高大学生の親達、教師達、企業の重戦士達、つまり日本の全構造を担っているのが、“団塊の世代”で、20年前、既成価値の崩壊、規則と壁の解体の幻想に向った70年を通過した者達だ。価値の転換も無く、血塗られた個人史を自ら圧殺し、家庭の親として子の教師として、会社の重責として、文化の担い手として規則を作り、壁を塗り、一刻一城の繁栄を磐石たらんとする。まるでとっくに潰されたスターリンの一国社会主義ではないの。その子達、大いなる社会的理念の不信から自我の確率を遠く避けようとする。“モラトリアム人間”となる。モラトリアム人間は切り捨てることは出来ないので只あれもこれも拾い集めるが、自我は無いから門を叩くことはしない。

(アメノウズメノミコト)

(1990.7記)