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色即是空
VOL.45

 楊貴妃もクレオパトラも幼少の頃より香料を採取し体に馴染ませ、男を虜にした。―が、その媚薬麝香は己が命をもはかなくした。香薬の始まりが数千年前に遡り、しかも命を賭していたとは!―匂いを嗅覚することから香りが生まれた訳だが、匂いは男女を識別し誘惑するという生命の根源でもある。

 都市が成立するという事は、人が集まり商業が栄え様々な<楽>文化が広まるという事。食物や酒類が溢れ、その香料と共に糞尿、発汗、吐息、性液の混濁した匂いと臭いが都市の自然を造る。今のハイテク科学や衛生化学力で臭い匂いは都市から消される。かくて現代都市生活では匂いは嫌われる。

 多くはの映画や音楽に、トレンドやジャンルでの色の違いを出しても匂いの違いは無い。というよりブランド香水で消されている。本来あるべき自然発生的なその作品の体臭が無い。創り手に無いからだろう。魂の入れ所も判らず何でも揃って便利なコンビニエンス・ストアーだ。候考賢の新作「非情城市」は新鮮な匂いがある。勢いがあり非常に生だ。日本映画が束になっても適わない。監督の体臭が浸み込んでいる。

 ”色は匂へどちりぬるをわか世誰そ...”

(幻想皇帝)

(1990.4.1記)